複利計算の公式の導出過程を追って式の意味を理解してみよう

本記事では複利計算に関する以下の公式

$P=\frac{C}{1+r}+\frac{C}{(1+r)^2}+\cdots+\frac{C}{(1+r)^n}+\frac{F}{(1+r)^n}$

$P$:債券などを”買うとき”の値段,$C$:クーポン(後述),$r$:利回り,$F$:債券などを”売るとき”の値段

を導出する考え方を示します。

高校の数Bの範囲がメインですが、

  • 数学が苦手だ(だった)
  • 文系なんでそもそも数学知らん

という方も、式変形だけ追っていただければ、丸暗記に頼らずにした上で覚えることができると思います。

目次

P[円]の債券を利回りrで複利運用する【左辺の考え方】

まず初めに「複利運用」とは何か?というところですが、銀行の利息を考えて頂けると想像しやすいかと思いますが

例えば100円を、利息が毎年1%の銀行に預けるとすると(数値は適当です笑)、1年後には100円$\times$0.01$=$1円ですので
1円だけ増えた101円に成長することになります。

さらに2年目は102円になるのではなく、1年で成長した101円に利息が掛け算されることになるので、1円よりも少しだけ多い1.01円増えてくれます。

これを一般的に価格:P, 利息:r, 運用期間n[年]として考えるとお金の増え方は、

時間お金の状態
預けた瞬間P$\times$(1+r) 円
1年後P$\times$(1+r) 円
2年後P$\times$(1+r)$^2$ 円
$\vdots$$\vdots$
n年後P$\times$(1+r)$^n$ 円

の様になり、利息rの銀行に預けたP円はn年後にP(1+r)$^n$円に成長していることになります。この現象は銀行に限らず債券などの他の金融商品にも適用できる原則であり、「P円を利回りrで複利運用するとn年後には

P(1+r)$^n$円

になる」と言うことができます。

それではこのP(1+r)$^n$円というものを左辺として一旦覚えておくことにして、続いては同じ現象を別角度から見ていくことにしましょう。

債券から実際に回収できるお金【右辺の考え方】

今度は若干「金融商品っぽい」角度から、複利運用について考えていきます。そのために一番はじめの公式の右辺のクーポンC, 額面Fに注目します。ここでクーポンは「毎回貰える金額」ぐらいに捉えて頂ければ問題ありません。

先ほどはP円を銀行に預けて成長させる例を出しましたが、今回はP円で「ある権利を買う」ことを考えてみます。すなわち債券の概念です。

例えばある会社Xから「毎年C円を貰える債券」をP円で購入したとします。そして毎年貰うC円は利息rの銀行口座に振り込んでもらうことにします。さらに買った債券は売却可能であり、n年後にF円で誰かに売却することにします。

このように考えるとまず銀行口座の金額は以下のようになります。

時間貰えるお金
債券を買った瞬間0 円
1年後C 円
2年後C$\times$(1+r)+C 円
3年後{C$\times$(1+r)+C}$\times$(1+r)+C 円
$\vdots$$\vdots$
n年後C(1+r)$^{n-1}$+C(1+r)$^{n-2}$+$\cdots$+C(1+r)+C 円

さきほどのP円の複利運用の時と少し違う形になりました。流れを追うと、まず 債券を買った瞬間は口座の中身は0円で、1年後に初めてC円が貰えます。そして2年目はこのC円が複利運用されてC(1+r)円に成長しますが、それと同時にまた新しいC円が貰えるので、2年目の残高合計としてはC(1+r)+C円となります。さらに3年目は「C(1+r)+C円 が複利運用されて、さらに新しくC円もらえる」ので残高は{C(1+r)+C}$(1+r)$+C円となります。

ここで3年目の {C(1+r)+C}$(1+r)$+C円 を少しだけ式変形してみるとC(1+r)$^2$+C(1+r)+C円となり、「規則性のありそうな形」になっていることを感じていただけると思います(思って欲しいです笑)。
この規則性のありそうな形をn年後に応用したらn年後の残高は

C(1+r)$^{n-1}$+ C(1+r)$^{n-2}$+$\cdots$+ C(1+r)+C円

となります。さらに債券は買った当初はP円でしたが、n年後にはF円に値上がり(もしくは値下がり)しているので、これを売却して F円を得ることになりますので、この複利運用で貰える金額は

C(1+r)$^{n-1}$+ C(1+r)$^{n-2}$+$\cdots$+ C(1+r)+C+F 円

ということになります。これを右辺として先ほどの左辺=右辺の形にしてみましょう。

(左辺)=(右辺)の形から式変形してみる

これまでの説明で、

❶P円を利息rでn年間複利運用→P(1+r)$^n$ 円
❷毎年C円くれる債券P円で買い、n年間保有して最後にF円で売る→ C(1+r)$^{n-1}$+ C(1+r)$^{n-2}$+$\cdots$+ C(1+r)+C+F 円

ということが分かりました。

この2つはどちらも「P円を利息rで複利運用した結果、成長した金額を貰える」ということを意味し、両者は同じ現象を別角度から眺めているだけということが分かります。同じ現象なのでイコールで結ぶことができるので、

$P(1+r)^n$=

$C(1+r)^{n-1}+ C(1+r)^{n-2}+\cdots+ C(1+r)+C+F$

となります。さらに両辺を(1+r)$^n$で割り算すると、

$P=\frac{C}{1+r}+\frac{C}{(1+r)^2}+\cdots+\frac{C}{(1+r)^n}+\frac{F}{(1+r)^n}$

となり、一番初めに載せた公式が導かれました!

まとめ

今回は「P円を利息rで複利運用してn年後に貰えるお金」と「毎年C円ずつ貰える債券をP円で買って、利息rで複利運用したのち、n年後に値上がり(値下がり)したF円で売る。」という2つの側面から複利運用の現象を捉え、左辺=右辺の形から公式を導きました。この公式はまさに例で示したような債券を購入する場面や、若干応用が必要ですが株式の購入場面でも、その投資リターンを定量的に求めたい場合に利用されます。

本記事は井手正介さん著の「株式投資入門」を参考にしております。本記事では数学的な背景として「公式の導出」を行いましたが、同書籍には公式の具体的な運用場面などが記載されています。さらに本のタイトルの通り株式に関する入門書ですので、もし株に興味のある方が居ましたら参考になるかと思います。

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上記書籍の他のテーマについては今後別の記事を書くと思います(ご確約はできませんが…)。

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